M&Aとは?知っておきたい基礎知識

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M&Aの活用と効果

M&Aという言葉を聞いたことがありますか?

近年、M&Aという言葉が日常的に話題になることが増えてきました。
日頃関わりのない方にとっては、専門的な言葉でよく分からないという方も多いと思います。

今回は、M&Aについて分かりやすくご説明いたします。

M&Aとは?

M&A(エムアンドエー)とは『Mergers(合併)and Acquisitions(買収)』の略です。

直訳すれば、「合併と買収」という意味です。

M&Aは、2つ以上の企業を一つの企業に統合したり(合併)、ある企業が他の企業を買い取ったりする事(買収)をいいます。

何故M&Aが必要なのか?

何故M&Aが必要なのか?

M&Aは、企業の存続と成長の為に必要な手段となりえます。

基本的に、資本主義のもとでは多くの利益を生む企業が「良い企業」として評価されます。

その理由は、企業が多くの利益を生み出すことによって、投資した人が多くのリターンを得られるからです。

経済環境は常に変化しており、それに合わせ企業も経営の変化をさせていかなければなりません。
変化に対応できなければ、利益を生み出せなくなり資本主義のもとでは「悪い企業」として評価されてしまいます。

そのような厳しい環境の中で「良い企業」として生き残っていく為には、スピーディーにビジネスを展開し、常に取捨選択をしなければいけません。

そんな時にM&Aをうまく活用することにより、自社の強い部分をさらに成長させ、弱い部分は補強したり、切り捨てる必要があります。

M&Aを有効的に活用すれば、企業の存続と成長を実現させることが可能になります。

M&Aの活用と効果

M&Aを活用する事によって、様々な効果を得ることができます。

例えば、買い手にとっては上手くいくか分からない事業を一から作り上げていくよりも、すでに利益が出ている他の企業を買い取った方が確実ですし、同時に時間も買うことができます。

売り手にとっても、自社内で重要度が低いビジネスがある時、売却した方が今後得られる利益を現金に変えられ、重要度の高いものに投資することができます。

また、M&Aを行う事により「シナジー効果」も期待できます。
「シナジー効果」とは簡単に言えば、相乗効果という意味です。

1+1が2以上の効果を生むことを指す言葉としてよく表現されます。

例えば、小売業で自社のエリアが関東であれば、同業他社を合併、買収することで営業エリアを拡大できます。これでは1+1=2のままですが、エリアを拡大した事によって、より幅広い顧客のニーズに対応できるようになったとすれば、シナジー効果が現れていると言えます。

M&Aの手法と特徴

M&Aの手法と特徴

M&Aを行うには様々な手法と特徴があります。

株式譲渡

最も基本的な方法は株の売買です。

株を売買する事によって会社の議決権を譲渡し、会社ごと全て売買することができます。

小規模なM&Aにもよく使われる手法で最も基本的な取引方法です。

第三者割当増資

「第三者割当増資」とは、売り手企業が特定の相手に対してだけ新たに株式を発行し、買い手企業に引き受けてもらう方法です。

買い手は「第三者割当増資」を引き受けることで株を大量に取得できる為、議決権の割合を高めることができ、経営権を手に入れることができます。

企業の資金調達の際や企業再生のM&Aにおいてよく使われる手法です。

株式を大量に取得する方法ですが、既存の株主がいるため100%の完全買収はできません。

株式交換・株式移転

他社の株主が持っている株を、自社が発行する株と交換して手に入れるのが「株式交換」です。

「株式交換」を行うことによって、子会社の株主に親会社の株主となってもらい、子会社を100%子会社にすることができます。

「株式交換」というと株式のみしか交換できないかと思われがちですが、親会社の株式や有価証券、別会社の株式でもかまいません。

これらのことから交換時の柔軟性が高いことが特徴です。

一方、新しく設立する会社の株と自社株を交換するのが「株式移転」です。

株式移転は、複数の会社が経営統合を行う場合や持株会社(ホールディングカンパニー)体制に移行するために用いられるよく使われる手法です。

経営統合の際に「株式移転」を使えば、統合前の両者の株主は新会社の株主となり、統合会社は新設した持株会社の100%子会社となります。

TOB(公開買付け)

TOBとは、「買い付け期間・株数・価格」をあらかじめ公告した上で、不特定多数の株主から株式を買い集める制度のことです。一定量以上の証券取引を行う場合は公開買付けが義務づけられています。

TOBには「友好的TOB」と「敵対的TOB」と言われる2種類があります。

買収される側の賛同を得たうえで、経営権を取得しようとするのは「友好的なTOB」です。
反対に、賛同なしに一方的なTOBを仕掛けることを「敵対的TOB」といいます。

TOBに関しては、過去にニッポン放送をめぐりフジテレビとライブドアがTOBを行い話題になりました。

事業譲渡

事業譲渡とは、会社の事業の全部または一部を他の会社に売買する方法です。

譲渡する対象としては、店舗や工場、事業体の財産や債務、事業に必要な営業資産、ノウハウなどが含まれます。もちろん、会社を丸ごと譲渡したりもします。

会社内の不採算事業を切り離し、事業の選択と集中を進める場合などによく使われる手法です。

合併

合併とは、複数の会社が一つの会社になることです。

合併には「吸収合併」と「新設合併」の2種類があります。

1社のみを存続させ、その他の会社を存続会社に吸収させることを「吸収合併」と言います。
一方、合併する企業をすべて消滅させ、新設した会社にすべての企業を統合させるのが「新設合併」です。

規模が大きい合併の事例で言えば

  • 三菱東京UFJ銀行(東京三菱銀行+UFJ銀行
  • 三井住友海上火災保険(三井海上火災保険+住友海上火災保険)
  • スクウェア・エニックス(スクウェア+エニックス)
  • 第一三共(第一製薬+三共)

などが合併の事例です。

一般には、合併といったら「吸収合併」のケースが主流です。

会社分割

会社分割とは、会社の一部の事業部門または全部を切り離して新会社にしたり(新設分割)、他の会社に移したりする(吸収分割)手法です。

会社分割には多数のバエリエーションがあるのも特徴で「新設分割」「吸収分割」に加え、新会社の新しい株式を元の会社が持つ「分社方分割」か、元の会社の株主が持つ「分割型分割」の4種類のバリエーションがあります。

M&Aの進め方

M&Aの進め方

M&Aの進め方には多くのステップが必要になります。

規模や複雑さによってバラバラですが、買収契約成立がするまでには大体数ヶ月〜1年、場合によってはそれ以上の期間を有する場合もあります。

M&Aの基本的なプロセスは以下のような流れになります。

1.相手探し

M&Aは、まず相手を探すところから始まります。

上場会社や未上場会社まで国内には多くの会社があり、その中から自分の欲しい条件に合った相手を探すのはかなり大変です。

その中で、幅広くターゲットになりうる候補をピックアップし、それぞれを評価し優先順位をつけていきます。

優先順位が決まったら、相手に対しアプローチをかけていきます。
アプローチをかけた時点で相手方が話に応じてくれるかどうかは相手方の状況にもよります。

2.初期調査

アプローチをかけた相手方がM&Aの提案に同意してくれたら「秘密保持契約」を締結します。

理由は、この先相手方と話を進めていく上で、収益性や事業計画など内部情報にアクセスする必要があり、外部に漏れないようにするために守秘義務を書面で確認するためです。

「秘密保持契約」を交わしたら初期的調査を開始します。
M&Aのターゲットを調査することを「デューデリジェンス」といいます。

相手方の内情を色々調査し、買うとすればどのくらいの値段になりそうかなどを判断します。

実際にM&Aを実行するのであれば、相手方にどう行った条件を提示するのかを決め、基本合意へと進みます。

3.基本合意

相手方に提示する条件が決まったら交渉に入ります。

この時点で双方の希望条件が合致した時点で、基本合意書を締結します。

基本合意書には双方で合意したおおまかな条件や買収方法、価格、独占交渉権、最終締結時期など、様々な事項が記載されています。

基本合意書は双方のM&Aに関する意思表明を形にしたものであり、この時点で終わりではありません。基本合意締結後は、M&Aが成立する為により詳細な内容を調査していくことになります。

4.詳細調査

基本合意書に基づき詳細な「デューデリジェンス」を行います。

初期的調査では発見できなかった問題点などはないか、相手方から提出されていた資料などの正確性や信頼性を確認し漏れなども詳細に確認します。

詳細調査は、専門性の高い内容も入ってくるため、弁護士た公認会計士、税理士などの専門家を派遣し、実施する場合も増えています。

5.交渉

詳細な「デューデリジェンス」の結果が出たら、それらの情報をもとに最終的にM&Aを実行するかどうかの判断をします。

実行する場合、最終的に相手方に提示する条件を決め最終的な交渉に臨みます。

この交渉で双方が合意したら最後の契約締結です。

6.最終譲渡契約

細かな条件について最終交渉を行い、両者が完全に合意に至りM&Aを実行することになった場合「最終譲渡契約書」を締結します。

この「最終譲渡契約書」の締結によってM&Aに関する契約は完結します

「最終譲渡契約書」は法的にM&Aを成立させるための手続きであり、株式の譲渡や譲渡代金の授受、代表者の交代などが行われます。

7.クロージング

「最終譲渡契約書」の締結によってM&Aに関する契約は完結します。

しかし、実際にはその後、買い手には不必要な業務委託やローン契約の解除などの手続きを一定期間に進めることが必要になってきます。

「最終譲渡契約書」の締結後に必要な作業がすべて終了し、引き渡しなどを全て終わらせることをクロージングを言います。

8.PMI(Post Merger Integration)

PMIとはM&A実行後の統合プロセスの総称です。

M&Aはクロージングが終わってからスタートといっても過言ではありません。
また、M&Aする目的は事業戦略の実現をするための手段であるということを忘れてはいけません。

M&Aをした後に何をしなければいけないのかを常に考え統合(PMI)に備えましょう。

まとめ

M&Aは、企業によって目的はバラバラですが、企業の価値を向上させるという点ではどの企業も当てはまることでしょう。

ビジネスは常に環境に合わせて変化していかなければいけません。

クローバル化が進み、競争がますます厳しくなっていく中で、M&Aは一般的な経営戦略のひとつとなりつつあります。

M&Aを行う目的をしっかりと認識し、競争力を高めることによって、企業価値の向上に繋がっていくことを期待しています。

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