M&Aを検討している方には何かしらの理由が必ずあります。
M&Aの手続きはとても複雑であり、売り手企業様と買い手企業様の状況によって最も良い手法を導き出さなければいけません。
今回は、M&Aの手法のひとつである事業譲渡についてご説明させていただきます。
事業譲渡とは?
事業譲渡は会社が保有する事業の一部や店舗、もしくは事業の全てを丸ごと譲渡したりする事を言います。
株式譲渡の場合、対象会社のオーナー(株主)と買い手の取引だったのに対し、事業譲渡の場合には対象会社あるいは対象事業と買い手の間の契約になります。
その為、譲渡はオーナーではなく対象会社に支払われることになります。
会社の不採算事業の一部を売却したり事業の集中を行うときになどに使われ、個人営業の店舗やクリニックなどの小規模のM&Aにもよく使われる手法のひとつでもあります。
事業譲渡のメリット・デメリット
事業譲渡のメリットとデメリットについてご説明いたします。
メリット
事業譲渡には以下のようなメリットがあります。
- 一部の事業や店舗だけを引き継ぐことができる
- 税金や時間外手当の未払いなど、薄外債務を引き継ぐ恐れがない
- 買い手でのれん代(営業権)が計上される場合は節税が可能である
会社全体として5つの事業を運営している企業があり1事業のみを売却したい場合、事業譲渡であれば可能になります。
また、簿外債務を引き継ぐ恐れがないので、貸借対照表に記載されていない残業代の未払いや債務を引き継ぐ恐れがありません。
その為、簿外債務や帳簿に載っていない物などを調査するデューデリジェンス(DD)面でのコストをかなり抑えることができます。
デメリット
事業譲渡には以下のようなメリットがあります。
- 売却代金は対象会社に支払われる為、売り手のオーナーは売却金を手にすることができない。
- 行政上の許認可や従業員の承継手続きなど面倒な手続きが必要。
- 株式譲渡と比べると、手続きに時間がかかる。
事業譲渡のデメリットとしては、株主総会の決議が必要であり、1つひとつの契約を引き継がなければいけない為、手続する手間と時間がかかることです。
また、株式譲渡とは違い、譲渡対象は会社なので売却した資金をオーナーが受け取ることができません。
事業譲渡の特徴
事業譲渡は、中小規模のM&Aにおいて比較的よく使われる手法です。
中小規模の案件であれば、譲渡対象となるものや契約数もそれほど多くなく、株主総会の決議もオーナー経営者が経営権を支配している場合が多いので単独で決定することができます。
仮にオーナー経営者以外の株主が居たとしても、少人数で構成されていることが多くデメリットよりもメリットの方が多いというのも特徴です。
大企業の場合、事業ひとつとっても様々な人員や契約の上に成り立っています。
株主招集に手間がかかることや契約の再締結が非常に負担となる為、大企業ではあまり使われない手法です。
まとめ
今回は事業譲渡について説明しました。
事業譲渡は中小案件のM&Aにはよく利用されるスキームです。
経営には「選択と集中」という有名な言葉がありますが、事業譲渡は事業の「選択」を検討する上で利用しやすい手法になります。
M&Aを検討中の方は覚えておいて損はないでしょう。